流山児★事務所ワールドツアー公演
Ryuzanji Company World Tour 2002〜2003



=『狂人教育』(1部地方ではこのタイトルで上演)



作:寺山修司  演出:流山児祥

舞台写真


出演:青木砂織、伊藤弘子、井沢希旨子、米山恭子、木内尚、畝部七歩
沖田乱、V・銀太、谷宗和、イワヲ、竹内大介、本田実

 

 

2002年

8月23日(金) 出水市文化会館【全席自由】
開演:19時
料金:大人2,500円 高校生以下1,000円
問合せ:出水市文化会館 TEL0996(63)2106

8月24日(土) 大口文化会館【全席自由】  8月17日〜18日の二日間のワークショップ
開演:18時30分
料金:大人2,500円 高校生以下1,000円
問合せ:大口文化会館 TEL09952(2)6320

8月29日(木) Sendai イズミティ21小ホール【全席指定】 仙台演劇祭2002参加 
開演:19時
料金:前売3,000円 当日3,500円 学生割引1,500円
問合せ:仙台市青年文化センター TEL022(727)1875

9月1日(日) Kawanishi 川西町フレンドリープラザ【全席自由】 
開演:14時
料金:前売3,000円 当日3,500円 高校生以下500円
問合せ:川西町フレンドリープラザ TEL0238(46)3311

9月2日(月) Akita 秋田市文化会館小ホール【全席自由】 
開演:19時
料金:前売3,000円 当日3,500円 学生割引1,500円
問合せ:シアター・ル・フォンコンブル TEL018(839)5716

9月4日(水) Hriosaki 弘前文化センター【全席自由】 
開演:19時
料金:前売2,500円 当日3,000円 学生割引1,500円
問合せ:弘前市民劇場 TEL0172(36)5402

9月5日(木) Aomori 青森市男女共同参画プラザAV多機能ホール【全席自由】 
開演:19時
料金:前売2,500円 当日3,000円 学生割引1,500円
問合せ:青森演劇鑑賞会 TEL017(722)7944

9月7日(土) Hachinohe 八戸市公会堂文化ホール【全席自由】 
開演:14時
料金:前売2,500円 当日3,000円 学生割引1,500円
問合せ:八戸市民劇場 TEL0178(43)0615

9月10日(火) Yuda 湯田町銀河ホール【全席自由】 
開演:19時
料金:前売3,000円 当日3,500円 学生割引1,500円
問合せ:湯田町銀河ホール TEL0197(82)3240

9月12日(木) Morioka 盛岡劇場メインホール【全席自由】 
開演:19時
料金:前売3,000円 当日3,500円 学生割引1,500円
問合せ:流山児★事務所 TEL03(5272)1785

Beijing 北京
2002年10月 4−7日 [周五−周一] 北兵馬司北劇場
電話010-6404-8021 参加 北京2002国際小劇場展演

■Moscow Москва
11, 12, 13 - ое октября Московский
Драматический Театр на Перовской TEL370-7809

■Taipei 台北
91年10月18-19日 [周五・周六]
Y17 台北市 青少年育樂中心 電話02-2343-2388 (参加 東京 零距離 日本演劇祭)

■Macau 澳門
10月23・24日[周三・周四]
Macau Forum II 電話988-4131 (参加 Macau Fringe 2002)

10月29日&30日 Tokyo 新宿シアターサンモール
開演:29日は19時30分 30日は14時と19時
料金:前売3,200円 当日3,500円 学生割引2,500円
問合せ:流山児★事務所 TEL03(5272)1785

2003年

■カナダ トロント Tronto Toronto Harbourfront Center
  3月21〜23日 芸術と狂気の世界演劇祭 招待参加

■カナダ ブライス Blyth Festival's Theatre
  3月25日

■カナダ バンクーバー North Vancouver Centennial Theatre
  3月27、28日

■カナダ ソルトスプリング島 Salt Spring Art Spring
 
 3月30日

■韓国 水原華城国際演劇祭 招待参加
  
6月1516

■Asia meets Asia2003 赤坂Die Pratze 
  
11月2日

 

 

 

劇評

 

 

大岡 淳   亀有リリオホール  テアトロ 200111月号

 

 これは、本来人形劇として構想された戯曲である。流山児演出は、物語を演ずる人形たちを女優陣が、その人形たちを操る人形遣いを男優陣が演ずるという、明快な仕掛けを施した。人形たちが演ずるのは、ある家族の物語である。寺山戯曲の実験性は、良い意味でわかりやすいものであって、流山児演出のセノグラフィも、ロープで囲まれた空間の内側が人形、外側が人形遣いのエリアとなる、明瞭な図式を提示していた (美術=加藤ちか)。そして最後には、操る者と操られる者との関係が逆転し、日常と非日常の転倒が目論まれる。インターナショナルな視線に耐えうる古典″として、寺山作品が再生する機会に立ち会えたことを、素直に喜んでおきたい。

 

 

西堂行人 カイロ実験演劇祭 テアトロ 200112月号

 

「実験」は先鋭化すれはするほど、痩せ細っていくことは否めない。「実験のための実験」に陥りがちである。そこて今一度三つの「実験演劇」をシャッフルし、合体、再統合させてみたらどうなるか。それがどういうかたちをとるかはさまざまだが、わたしがこの演劇祭の最後に見た流山児★事務所の『狂人教育』にはそのヒントが隠されているように思われた。寺山の端正な戯曲は人間と人形の支配/被支配を描き、権力と民衆の断絶を切り取り、民衆の側から自己の尊厳を奪回していく革命劇である。演出家 流山児祥はこの構図をよく見通せる装置と六個のトランクに集約させ、洗練された舞台に昇華させた。複雑な内容を簡素な仕掛けのなかに圧縮し、大衆的な手法を盛り込みながら、人間世界の暗黒を暴き出したこの舞台は、字義とおりの「実験」とは言えないかもしれないが、演劇を豊かに展開しながら、演劇固有の思考の運動を刻んでいた。その上質の仕上がりは今回参加したなかでも出色のものの一つに数えられよう。実験性と大衆性(民衆性)は一見馴染みにくいように思われる。が、両者が結合して初めて演劇の可能性が切り開かれるのではないか。ただしそれは、不可能性を潜った後で、ようやく針の穴の向こう側て逢着できる地平なのだ。そこに実験演劇の未来がある。

 

 

 

「実験的」2001年九月8日号(ヒシヤーム・イプラヒーム)

 

そこには、さまざまな芸術形式や異なる文化の対話がある。この戯曲は人形劇のためのものであり、日本の舞台芸術の伝統に深く根ざしている。今回の演出では、人形が人間の役者に置き換えられ、いくつかの詩的な象徴と深い比喩性をたたえている。また、役者の人形的動きの技巧は人形を完全に真似るほどまで完壁さに達している。そして時には繊細になったり、単純になったりして、日本の審美的伝統の特徴である示唆に富んだ語り口にもとづく高度な演技は最高の域に達している。また、語り合い、ハミングしてリズムをとり合うのは、融合と相互の愛情をひきおこす西洋的な手法でありる。それらは交錯しながら審美的語り口のあいだで一緒になり、なおかつ風刺的な喜劇感覚を失わない…。

〔略〕

 これは深遠な芸術的隠喩であり、人間の普遍的な諸問題を包含しており、個人と他者との関係および個人と社会の支配権力との関係を考察している。

〔略〕

この作品は以前、この実験演劇祭に参加したほとんどの日本のグループの上演とは対照的に、イタリア演劇に近い形式で構成されている。それは背景が西洋の演劇と結びついた形式であり、その審美性はこの劇団の公演によって確立されたものである。 流山児★事務所はこの作品で、演劇は諸文化を越えて国際的なスケールを持つ事が可能である事を証明している。なぜなら、彼らは現在の世界の文化に開かれた同時代の芸術の枠内で、全世界的、人間的諸課題を議論する前例のない上演を提出しているからである。

 

 

「劇場が驚くべきものになるとき」
(「実験的」
200199日号)(エッズ・エッディーン・バダウィ)

 「人形の家」は、数多くの芸術形式を通してその諸思考を提示しようとしている。踊りと人間の体による表現を重視する演技を通した表現の試みとともに、劇場を演劇的祝祭の場に変化させる様々な事件に満ちている。

〔略〕

この作品は家族間の人間的欺瞞をテーマにしている。社会の一部分としての家族という意味では、普遍的に存在する人間的、社会的欺瞞を曝け出している。また、この舞台は人間の持つ普遍的なテーマに加えて、ダンス・歌・メイキャップ・楽器演奏など多くの芸術的手法を使っている。それゆえこの舞台は芸術的祝祭の場に変わり、芸術的な空間に変わる。

〔略〕

西洋的戯曲の方法で書かれた台本にもとづくにもかかわらず、この上演は、同時に、日本の演劇の伝統に非常に忠実であり、それは、芸術的楽しみを享受できる演劇様式の創造を非常に重んじるものである。この美しい上演は、これまでの演劇祭で日本が提出した多くの作品にさらに華をそえるものである。                       

 

 

 

「『人形の家』は人間の自由の上演である」 サヒール・ニブハーン

 

<日本人による人形の家>

 この作品は、一瞥でその諸事件を追うことは難しい。これは、刺激的な騒音とたくさんの事件ときらびやかな音楽と踊りの楽曲で満ちている。このオペラ的作品は、人形の姿をした6人の女役者とやはり人形を使う6人の男達によって演じられ、そこにおいて人間が人形に変わる大胆さなを特徴とする実験的驚きを見出すだろう。

(略)

 そして、実験劇場祭の公式コンペティションへの参加上演作品の選出における基準が欠如しているため、国際オブザーバー委員会は再検討を必要とするだろう。実際、誰一人として日本の上演「人形の家」が実験演劇祭の最も重要な上演の一つであるにもかかわらずコンペティションから退けられたのか知らない。他方で、公式コンペティションには、芸術水準の低い諸上演が公式コンペティションに参加しているのである。

(略)

 

 <日本の人形> (アブラ・エツルーニー)

人形を人間の相対物で置き換え、私たちに演技技術とさまざまな文化および芸術形式のあいだの交錯をもつ深い視点を与えてくれた。それは、人形的演技の技巧と詩、音楽の活用に加えるものである。                

 

 

 

 

 

『狂人教育』カナダ公演劇評

 

 

ベケットも眉をひそめそうな登場人物達。大胆でスタイリッシュに仕上げられた感嘆すべき実験劇。そこでは、人間は人形となり、言葉はそれ以外のあらゆるものになる。豊かな音声、きらびやかな衣装、そして素晴らしい振り付けの舞踏は、演劇フリークにとって大変なご馳走である。

by Scott Sharplin, August 22, 2000          The See Magazine

 

 

エキゾティックで実存的不可解さに満ちた舞台 ―― その多媒体視覚効果と強烈な演技は否応無しに楽しませてもらった。太鼓の生演奏、物語の句読点となる強烈な銅鑼の音、それが誘発するアクロバティックなダンス(特に人形を操るシーン)。衣装、フェイス・ペインティング、パーカッションなどに日本古典演劇の片鱗が見られるが、この作品、本質的には自然発生的で、時として背筋の寒くなる現代劇である。

by Roger Lavesque, August 23, 2000      The Edmonton Journal

 

 

「人間の自由意思」と「宿命」との対立を主題にした「狂人教育」はカラフルで無秩序な超現実ドラマ。何とか正常でありたいと必死に足掻く破壊された家庭の物語。歌舞伎調の衣装を纏った六人の女優を黒ずくめの人形遣い六人が時折操る精巧な舞台。エキサイティングな「音」と「動き」、そして芳醇で妙に魅力的な音楽に満ち満ちている。黒衣達の発する強烈な叫びと衝撃音、それがもたらす高揚感に乗って俳優達は悪夢のような一族の物語を紡ぎ出す。

by Mike Ross, August 26, 2000          The Edmonton Sun

 

 

 

「狂人教育」が忘れがたくエキゾチックな印象を与えるのは、その構成要素の豊かな多様性に負うところが多い。能、歌舞伎、更にはブレヒト劇、モダンダンスの要素を併せ持ち、その音楽は西欧のジャズ、ポップ、ラテンを日本的感性で濾過した片編の組み合わせである。「狂人教育」は、女権剥奪社会に住む女達の苦悩を基本的テーマとしている。抵抗に打ち勝って羽ばたく創造精神と言う一抹の希望が暗示されてはいるものの、このオペレッタの劇的なフィナーレには身の毛がよだつ。

by Adrian ChamberlainSeptember 22000   The Times Colonist

 

 

 

同国が持つ人形劇の長い伝統に‘ひねり’を加えた、魅惑的な社会風刺劇。幕開きの舞踏シーンは象徴性に富んでいる。踊りと歌とリズミカルな詠唱で綴られる夢の世界。「狂人教育」を文学として理解すべきであるか、或いは、単に心を奪われて観るべきであるかは、議論の残るところである。

by Peter BirnieSeptember , 2000       The Vancouver Sun

 

 流山児★事務所ワールドツアー公演
Ryuzanji Company World Tour 2003

 

流山児★事務所2003年カナダ アートスプリング劇場公演劇評
2003年4月2日/ドリフトウッド紙  記者スーザン・ランディー   

狂気な色合わせ、見事なダンス編成にすさまじい音で日曜の夜、アートスプリングの 舞台を圧倒したのは日本の劇団によって上演された驚くほどすばらしい且つ風変わり な『狂人教育』だった。

この感動的な劇は満席のアートスプリングの観客を総立ちにさせ喝采の渦をもたら し、後に行われたキャストとのレセプションへと導いた。

客席に身を仰け反ってこの夜の芸術の全てを体感している観客たちに私は嫉妬してし まった。なんと言っても彼らは次の朝、劇評を書くために話を追いながら見る必要は ないのだからだ。私も出来れば観客の一人としてただ楽しみたかったものだ。

生き生きとしてカラフルな衣装、繊細でしかも完璧なメイクアップ、懐中電灯の灯 り、魅惑的な動きは観客の目を魅了し、高鳴る銅鑼、地響きする太鼓、竹撥の撓る 音、耳障りのよいBGMは観客の耳を満喫させた。

『狂人教育』は精神によい食べ物「心の糧」とでも言うべきものか。

中略(作品解説:もともとこの作品は人形劇として1962年に日本の理想家寺山修司に よって書かれたものである。そして流山児祥氏のアレンジで流山児★事務所によって 人間人形劇として上演された・・・・・・・・・・・・

劇場を後にした今でもテンション高く興奮は覚めやらない。彼等の多才さそして人の 体の巧みさにはただ驚かされた。6人の人形役の女性は並外れたテクニックで軽々と 人間の仕草から硬張った人形の動きへと移り動いていった。12人全員の役者はアクロ バットの技術を訓練していることは明らかだった。

女性たちの白塗りの下地にされたメイクアップは驚くほど表情豊かであった。又、一 座は小道具のスーツケースを幾度となく巧みに使い、明かりを作り出したりたて壁に したり舞台の光景を引き立てていた。

劇全体からは狂気と栄華がにじみ出ていた:この独特な舞台を見られたことはソルト スプリングの劇場のファンにとって本当に味わい深いご馳走だった。

 

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